ホテルの客室清掃は、部屋数を人数で均等に分けるのではなく、入室できる時刻、作業に必要な時間、点検済みで引き渡す期限をそろえて割り振ります。そのうえで、スタッフの対応スキルと勤務中の空き時間を照合し、担当する部屋と順番を決めましょう。
当日の清掃対象と出勤者が決まっていれば、今使っている紙やExcelに必要な項目を足して進められます。以下では、部屋一覧・スタッフ別の記入項目と、清掃2人・点検1人で6室を担当する架空の時刻表を示し、遅延や欠勤時の直し方まで説明します。
客室数より先に清掃時間と期限をそろえる
割り振りの完成形は、担当者の名前が全室に入った表ではありません。入室、清掃、移動、点検を時間軸に置き、期限内に引渡しまで進められると確認した表です。
同じ3室でも必要な時間は違う
まず、部屋ごとの予定時間を「基本の清掃」と「追加作業」に分けてください。基本の清掃に含めるシーツ交換やアメニティ補充の範囲をそろえ、追加のベッド設置などは別欄に記入します。基本時間に含めた作業を、追加分として二重に足さないことも大切です。
後述する架空例では、時間の長い3室を集めると120分、短い3室なら60分になります。同じ3室でも、必要な作業時間は同じではありません。
予定時間には、自館で部屋タイプや退室・滞在の別に測定した値を使います。本稿の分数は計算方法を説明するための架空値であり、業界標準やスタッフの能力評価には使わないでください。
清掃完了と引渡し完了を分ける
厚生労働省の職業情報でも、客室清掃の仕事の一つに清掃状況の再確認が挙げられています(2026-09-21時点)。(厚生労働省)
本稿では、清掃担当の作業終了後に、別の点検担当が確認する運用を例にします。これは全施設に同じ点検体制を求めるものではなく、自館の品質管理に合わせて置き換えるための例です。
担当表では「清掃完了」「点検待ち」「手直し中」「引渡し確認済み」を分けます。チェックインに間に合わせるには、清掃終了だけでなく、点検・必要な手直し・フロントへの報告まで予定に含めてください。
割り振り前に部屋一覧と勤務枠を用意する
最初に作るのは、部屋側の条件とスタッフ側の条件です。担当者名は、その条件がそろってから記入します。
部屋ごとに入室可能時刻と作業を記録する
既存の部屋一覧に、次の項目があるか確認しましょう。
| 記入項目 | 記録する内容 |
|---|---|
| 部屋番号・階 | 移動順を決めるための位置情報 |
| 退室・滞在の別 | 清掃範囲と予定時間を選ぶ区分 |
| 対象の状態 | 清掃確定、清掃不要、入室未確認、故障確認中、DND表示など |
| 入室可能時刻 | 入室条件を確認した時刻、確認先も併記 |
| 基本清掃分・追加作業 | 作業内容と必要な分数を分けて記入 |
| 引渡し期限 | 点検・報告まで終える時刻 |
| 担当条件 | 対応できるスタッフ、点検担当 |
清掃不要・入室未確認・故障確認中・DND表示の部屋は、それぞれ状態を分け、清掃確定の一覧へ混ぜない運用にします。保留中の部屋には「誰が、いつ再確認するか」も残してください。
入室可否は自館の手順とフロントへの確認で決めます。チェックアウト予定時刻を過ぎたことだけを根拠に、入室できると扱わないでください。
また、引渡し期限を全室一律のチェックイン時刻にすると、早着予定などの優先条件が抜けます。フロントと合意した部屋別の期限を記入し、変更があれば更新時刻も残しましょう。
休憩・準備・別業務を除いた時間を出す
スタッフ別には、氏名、勤務開始・終了、清掃を担当できる時間帯、対応スキル、休憩、別業務、準備・移動、点検の兼務有無を記録します。「出勤している時間」と「客室清掃を入れられる時間」は分けて考えてください。
割り振り用の計算は、次の形にすると整理できます。時間はすべて分にそろえます。
清掃に割り当てる上限分数 =対象時間帯の長さ-休憩-別業務-準備・移動-確保する余裕
ここで準備などを差し引くのは、客室内の作業枠を求めるためです。使用者の指示による業務に必要な準備や、事業場内で行う業務後の後始末は、労働時間に該当します(2026-09-21時点)。(厚生労働省)
法定休憩は、原則として1日の労働時間が6時間を超える場合に45分以上、8時間を超える場合に1時間以上を、労働時間の途中に確保する必要があります(2026-09-21時点)。(厚生労働省)
合計分数が足りていても、途中に休憩や別業務があれば長い作業は入りません。差し引き計算の後に、連続して使える時間帯を確認します。
担当と順番を決める4つの手順
作業は、①期限の早い部屋を押さえる、②対応者が限られる部屋を確保する、③移動を含めて順番を置く、④点検と余裕を検算する、の順で進めます。早い期限とスキル条件がぶつかる場合は、最初の二つを行き来して調整してください。
期限と対応スキルを先に確保する
部屋一覧を引渡し期限の早い順に並べ、点検・報告に必要な時間を引いて、清掃を終えるべき時刻を確認します。同時に、特定の作業に対応できる人が限られる部屋へ印を付けましょう。
その部屋を任せられる人の時間を、他の部屋で先に埋めないことが要点です。後述の例では、追加ベッドの設置に対応するAを301号室に置き、残りをA・Bの空き時間へ配置します。
「経験者だから多めにする」といった曖昧な配り方ではなく、対応できる作業と必要時間を表に残します。研修や付き添いが必要なら、教える側の時間も別に確保してください。
同じ階へ寄せて開始・終了を置く
期限とスキルを満たす範囲で、担当する部屋を同じ階へ寄せます。ただし、階をそろえることよりも、入室条件と期限を優先しましょう。
開始候補は、次の式で考えます。
清掃開始候補 =「入室可能時刻」と「前の作業終了時刻+移動時間」の遅いほう
清掃終了予定 =清掃開始予定+基本清掃分+追加作業分
最初の部屋は、準備と移動が終わる時刻を起点にします。開始候補から終了までに休憩や別業務が入る場合は、その連続枠には置けません。別のスタッフへ渡すか、次の空き時間へ移して再計算します。
点検担当の予定と余裕を確認する
清掃担当の表ができたら、点検担当の時間軸も作ります。清掃が同時に終わる部屋があっても、点検担当1人に同時刻の点検を二つ置くことはできません。
点検開始は、清掃終了と点検担当の到着の両方を満たす時刻に設定します。その後に点検・報告の時間を加え、引渡し期限を超えていないか確認してください。
余裕は、単に終業前の空白を見るのではなく、「各室の期限までに何分残るか」と「次の固定業務までに何分使えるか」を分けて見ます。午後に空き時間があっても、午前中の期限には充てられません。
6室を2人に割り振る時刻入りの例
以下は、清掃担当A・Bと点検担当Cで作る架空の計画例です。実際の施設・スタッフを測定した結果ではありません。
計算上の条件は、部屋間の移動を同じ階・別の階ともに5分、点検を各室5分とします。点検枠には完了報告とフロントの引渡し確認も含む設定です。自館で別途時間が必要なら、その分を足してください。
部屋一覧と担当表を照合する
全6室について、表の時刻以降に入室できる条件をフロントと確認した設定です。滞在室の期限は、フロントと合意した点検完了期限として扱います。
| 部屋・階 | 区分 | 入室可能 | 基本清掃 | 追加作業 | 合計 | 引渡し期限 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 301・3階 | 退室 | 10:00 | 30分 | ベッド設置15分 | 45分 | 11:15 |
| 302・3階 | 退室 | 10:30 | 25分 | なし | 25分 | 11:45 |
| 303・3階 | 滞在 | 11:30 | 20分 | なし | 20分 | 12:10 |
| 401・4階 | 退室 | 10:00 | 40分 | なし | 40分 | 11:30 |
| 402・4階 | 退室 | 10:40 | 35分 | なし | 35分 | 12:10 |
| 403・4階 | 滞在 | 11:00 | 15分 | なし | 15分 | 12:20 |
301号室は追加作業に対応できるAのみ、ほかの5室はA・Bとも担当できる設定にします。Cは点検専任です。
| 担当 | 勤務時間 | 準備・最初の部屋への移動 | 休憩 | 固定の別業務 |
|---|---|---|---|---|
| A | 10:00~13:00 | 10:00~10:10 | 12:20~12:35 | 12:35~13:00 資材整理 |
| B | 10:00~13:00 | 10:00~10:10 | 12:20~12:35 | 12:35~13:00 資材整理 |
| C | 10:40~13:00 | 10:40~10:50 | 12:30~12:45 | 12:45~13:00 記録整理 |
この例の15分休憩は施設が設定した架空の条件です。長い勤務に必要な法定休憩を15分で済ませる意味ではありません。
A・Bについて、部屋間の移動を各10分、遅延対応の余裕を各30分確保すると、清掃へ割り当てる時間は次のとおりです。
180分-準備10分-休憩15分-別業務25分-移動10分-余裕30分=90分
この枠に部屋を置くと、次の担当表になります。
| 清掃担当 | 部屋 | 清掃開始~終了 | Cの点検・報告 | 引渡し期限 |
|---|---|---|---|---|
| A | 301 | 10:10~10:55 | 11:00~11:05 | 11:15 |
| A | 302 | 11:00~11:25 | 11:25~11:30 | 11:45 |
| A | 303 | 11:30~11:50 | 12:00~12:05 | 12:10 |
| B | 401 | 10:10~10:50 | 10:50~10:55 | 11:30 |
| B | 402 | 10:55~11:30 | 11:35~11:40 | 12:10 |
| B | 403 | 11:35~11:50 | 11:50~11:55 | 12:20 |
Aの移動は10:55~11:00、11:25~11:30。Bの移動は10:50~10:55、11:30~11:35です。両者とも11:50~12:20を余裕として残せます。
Cの順番は401→301→302→402→403→303です。点検間に5分ずつの移動を置いても重複はありません。302の点検前に15分、403の点検前に5分の待機が入り、全室の点検・報告は12:05に終わる計画です。
照合すると、全6室に清掃担当が1人ずつ入り、清掃開始は入室可能時刻以降、点検終了は各室の期限内に収まっています。303号室は清掃終了から点検まで10分あるため、その間は「引渡し確認済み」にせず、点検待ちとして扱います。
部屋数だけで配った場合と比べる
同じ6室を、長い作業が片方に集まるように配ると、次の差が出ます。
| 配り方 | Aの担当と清掃時間 | Bの担当と清掃時間 |
|---|---|---|
| 室数だけをそろえた例 | 301・401・402=120分 | 302・303・403=60分 |
| 上の時刻表の配分 | 301・302・303=90分 | 401・402・403=90分 |
どちらも3室ずつですが、前者は作業時間に60分の差があります。後者では清掃時間をそろえ、担当階もまとめています。
ただし、毎回同じ分数へそろえる必要はありません。担当可能な時間帯やスキルが異なる日は、時間の均等よりも期限を守れる配置を優先し、負担の偏りは追加作業や移動も含めて確認します。
遅延・入室待ち・欠勤が出た日の直し方
変更時は全室を配り直さず、まず着手状況を確定します。通常の再配分は未着手の部屋を対象とし、作業中・清掃完了・点検待ちの部屋は区別して残してください。
未着手の部屋だけを再配分する
手順は、①遅れた部屋の終了見込みを更新、②未着手室の入室条件と期限を再確認、③対応できる人の空き枠へ移動込みで配置、④点検の順番を更新、の順です。
上の例で、Bが作業中の402号室に20分の追加時間が必要になったとします。清掃は10:55~11:50となり、その後の403号室は11:55~12:10へずれます。
この場合は余裕内に収まり、担当変更なしでも対応できます。負担を分けるなら、未着手の403号室だけをAへ移す方法もあります。Aは303号室を11:50に終え、5分移動して403号室へ入れます。
| 変更対象 | 変更後の清掃 | 変更後のCの点検・報告 |
|---|---|---|
| 402 | B:10:55~11:50 | 11:50~11:55 |
| 303 | A:11:30~11:50のまま | 12:00~12:05 |
| 403 | Aへ変更:11:55~12:10 | 12:10~12:15 |
301・302・401の予定は変えません。Cは402→303→403の間に各5分の移動を確保でき、すべて期限内です。A・Bの12:20からの休憩、Cの12:30からの休憩も動かす必要はありません。
再配分後の清掃時間はAが105分、Bが95分です。Aの移動は当初より5分増えるため、部屋を渡す際には作業分数だけでなく、この増加分も確認します。
入室待ちが生じた場合は、確認が済んだ別の未着手室を先に置き、保留室の確認担当と次の確認時刻を記録してください。なお、即時に業務へ対応するよう求められ、労働から離れることが保障されない待機は労働時間に当たります(2026-09-21時点)。(厚生労働省)
期限に入らないときはフロントへ判断を戻す
一方、Bが始業前に欠勤し、Cを点検専任のままとする場合は、Aへの再配分だけでは成立しません。
6室の清掃は合計180分です。最も遅い期限の12:20まででも、10:00から140分しかなく、準備10分を引くと130分です。移動と点検待ちをゼロとしても50分不足するため、順番の工夫だけでは解消できません。Aが欠勤した場合は、301号室の追加作業に対応できる人も不足します。
誰にも入らない部屋が出たら、責任者とフロントへ次の内容を渡します。
- 対象の部屋番号と引渡し期限
- 入室可否、残作業、足りない時間またはスキル
- 応援を入れる場合に必要な到着時刻と担当内容
- 引渡し見込みと、代替客室・優先順位変更などの判断が必要な事項
応援の確保や客室変更は、清掃側だけで確定させず、責任者・フロントの判断を受けます。休憩や点検を消して、表の上だけで間に合わせないでください。
決定後は担当表の更新時刻を入れ、旧担当・新担当・点検担当・フロントへ同じ内容を伝えます。紙とExcelを併用する場合も、どちらが最新版か分かる状態にそろえましょう。
フロントの交代時に引渡し待ちや保留室を伝える方法は、ホテルのフロント引継ぎの組み方も参考になります。
翌日の割り振りへ残す記録
作業後は、予定と実績の差を部屋単位で残します。開始・終了時刻だけでなく、入室待ち、追加作業、資材不足、移動、点検での手直しを分けて記録すると、次回どの時間を足すべきか判断できます。
たとえば20分の超過が入室待ちによるものなら、基本清掃時間へそのまま上乗せするのではなく、入室確認の時刻や順番を見直します。追加作業による超過なら、同じ条件の部屋に追加分を設定します。短縮をスタッフへ求める前に、見積もりから抜けていた作業がないか確かめてください。
勤務情報と担当条件を整理するシフト管理には、シフトラの勤務表管理と担当・スキル設定を利用できます(2026-09-21時点)。(シフトラ) ただし、ここで示した部屋別の入室条件・清掃時間・点検期限から客室を自動割当する機能や、PMSの清掃状況との自動連携を案内するものではありません。
自館の部屋構成と測定時間への置き換え、当日の入室確認、設備不具合への対応、引渡しの承認は現場に残る作業です。まずは今の担当表に入室可能時刻と点検後の期限を加え、担当者ごとの開始・終了を置くところから進めてください。